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Jolly,Twinkl & Floppy’sフォニックス比較【Jolly Phonics編】

くぬぎちゃん

Jolly Phonicsは日本でも最近よく聞きます。

どんぐりばぁば

Jolly Phonicsはフォニックスの代名詞のような存在ですが、詳しいシステムをみてみましょう。

目次

【再掲】シンセティック・フォニックス3社比較表のプレゼント

Jolly Phonicsを説明する前に、前回の【基礎知識編】でお配りした比較表をまだゲットされていない方は、ダウンロードボタンからアクセスしてみてくださいね。他社さんと見比べながら読み進めるとよいかもしれません。

*【フォニックス3社比較表】ご利用にあたってのお願い*フォニックス3社比較表は著作権を放棄していません。第三者への転売・譲渡・Social media(SNS)・ネットまとめ記事などでの転載はご遠慮ください。

Full SSP 界の王者:Jolly Phonics

日本でも「フォニックスといえばJollyでしょう!」と誰しもがイメージする有名なJolly Phonicsは、英国教育省認定教材の46社の代表格です。

英国の教育界がアナリティック・フォニックスからシンセティック・フォニックスに一斉に舵を切るきっかけとなった、2006年のRose Reportの根拠の論文で使用されてもいました。イギリスのフォニックス界では歴史も長く実力もそなわった教授方法として知られています。

英国のナショナル・カリキュラムが推奨するFull SSP (Full Systematic Synthetic Phonics)で一番イメージしやすいシステムでしょう。

しかし日本では、残念ながら名前は知っていても内容まで踏み込んでご存じの方はまだそれほど多くない印象です。

実は国内でもJolly Phonicsを小学校で試験的に導入している県もあるのですが(*註1)、まだまだ少数派です。

*註1:加藤茂夫、入山満恵子、山下佳世子、渡邊さくらの論文タイトルなどの情報はこの記事の最後に記載。

Jolly Phonicsの成り立ち

Jolly Phonicsは、もともと教員だったSue Lloyd氏が研究開発したSynthetic Phonicsの手法です。Lloyd氏が当時勤務していた小学校では、1970年前後主流だった“Look and Say”方式(単語を何度も見て記憶する方法)や1980年代の“Real Book” 方式(文字が単語を構成していることを生徒自身が自分で気づく学習法)ではなく、Lloyd氏が唱えたSynthetic Phonicsを学習した児童の読みと綴りが伸びたことが注目されていました。


このLloyd氏のフォニックスの手法がJolly Phonicsとして提供されたのは、1992年です。1987年にCris Jolly氏が設立したJolly Learning Ltd.とタッグを組んだことでこの手法が全国に広まりました。現在は150カ国以上の教育機関で使用されている世界的にもよく知られたフォニックス教授方法の一つです。

Jolly Phonicsの特筆すべき教材:2022年発売のサブスクソフトJolly Classroom

Jolly Phonicsで今もっとも旬な教材は、2022年に発売の教室用のサブスク・ソフトウエアJolly Classroomです。

SE経験もあるLloyd氏のご子息が中心に研究開発された画期的な学習補助ツールで、すでに多くの先生方の有能なアシスタント的な存在になっています。

Jolly Classroomは個人でのサブスクも可能ではありますが、解答が抜けている箇所があったり、画面をパッと見ただけでは何をどうすべきか直観的に分からない演習があったり、若干問題も見受けられます。

シンセティック・フォニックスの知識のある教師であればこのような不具合にフレキシブルに対応できるので、やはりJolly Classroomは教員向けの教室用ソフトウエアといえるでしょう。このソフトウエアをお子様と保護者様だけで使うのは、Jolly Phonicsの教授方法やフォニックスの基礎知識がない場合は少し難しいかもしれません。

しかし、Classroomの機能や内容を理解することで、Jolly Phonicsが何を重要と考えているかを知ることが出来そうです。

Jolly Classroomはネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの音声付

フォニックスを学ぶ際に一番気になるのは、ネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの音声が必要に応じて聞けるかどうかではないでしょうか。

たとえば、ブレンディング(*註2)やセグメンティング(*註3)の際に、何度も繰り返しネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの音声にアクセスできたら発音が正しいかの不安が払拭されますね。

*註2:単語を読む際、一つひとつの文字の音素をくっつけて、一つの単語として読むこと。例えば、satという単語を目にしたら、まずはs-a-tの一つひとつの文字を/s/と/a/と/t/の音素に変えて読み、その後それらをくっつけてsatを/sǽt/とひとくくりにして単語として読む方法のこと。フォニックスでは、ブレンディングは子どもの「読み」へ続くプロセスの一環と考えられている。

*註3:ブレンディングの逆のイメージで、単語に含まれる一つひとつの音を識別して声に出したり綴ったりすること。例えば、satと耳にした時に、s-a-tと分解して一つひとつの音素を言えたり書いたりするプロセスのこと。フォニックスでは、セグメンティングは子どもの「綴り」につながる取り組みの一つと考えられている。

Jolly Classroomでは、ほぼすべてのアクティビティにネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの音声が付いています。

インストールされている音声は、英語、米語、オーストラリア、ニュージーランドなど選択が可能なのも魅力的です。非ネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの教員にとっては福音の教材と言えるでしょう。

Jolly Classroomの千本ノック反復学習システム

ほぼすべてのアクティビティがネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの音声付であることも素晴らしいのですが、それ以上に感動するのは、Jolly Classroomが提供する反復学習システムです。

Jolly Classroomでは、毎週の新たな音素や書記素の学習に入る前に、前の週あるいはそれ以前の週の課題の復習が、手を変え品を変え提案されます。ちなみに書記素とは1つの音素を書きあらわす文字の集合で/f/を表すf, ph, ghなどの綴りのことです。

反復学習は、Jolly Phonicsにかぎらず英国教育省認定教材の Full SSP Systematic Synthetic Phonicsの学習手順の一つに組み込まれているもので、図のイメージのように5つのプロセスをふまえて学習を進めることが、フォニックスの定着に欠かせないとされています。

5つのステップとは具体的には反復(前週までの復習)」、「学習今週のターゲット音素の学習)」、「練習音素と書記素ををしっかり理解」「強化ターゲットの音素をブレンディングやセグメンティングで演習)」、「定着(デコーダブル系の本を読書)」を指してます。

Full SSPこのサイクルでフォニックスを学習することを重視しています。

もちろん、フォニックスに特化した学習だけではなく、子どもの英語力の基礎となる日頃の読み聞かせも、子どもの語彙やフレーズのインプットを増やすためには欠かせません。

これらのステップのうち、おざなりになりがちなのが授業最初の反復学習です。生身の人間であればそこそこのところで切り上げてしまいそうなこの復習のアクティビティを、ソフトウエアのJolly Classroomはミニゲーム感覚の教材などインタラクティブな方法で学習者に繰り返し提供しています。

基本的にJolly Classroomは教室内で教員が操作することが想定されているため、児童生徒の集中力をそぐ派手な仕掛けは用意されていません。ミニゲーム感覚の教材と説明しましたが、今どきのガジェット好きのお子さま方にとってはエンタテイメント的要素は物足りないかもしれません。

Jolly Classroomの反復学習の量と頻度に、「これほどのしつこさで繰り返し反復練習しないと、ネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの子どもでも音素と読みと綴りは身に付かないのか」と、あらためて気づかされます。

どんぐりばぁばはJolly Classroomのすべての課程を試させて頂いたのですが、新規の音素の学習が効率的にサポートされることはもちろんのこと、より印象的だったのは、毎回「この音素は習得できたかな?」「同じ音素でも綴りが違う同音異綴り(Alternatives)を覚えたかな?」と大量の反復学習を通じて音素と書記素の定着を確認してくることでした。

Jolly Classroomの作り手の「子ども達のフォニックス学習を何とか成功に導きたい」という熱意と執念が感じられるソフトウエアです。

Jolly ClassroomはStep1からStep3をすべて網羅

Jolly Classroomには、Jolly Phonicsでイギリスの4歳児(*註4)が1年間掛けて習得するStep 1からStep3の内容がすべてインストールされています。

*註4:レセプション(Reception)という、いわば小学校0学年にあたる年齢

具体的には、以下のStep 1から3の基礎から応用までのプロセスがシステマティックに提供されています。

  • Step 1:基本の42個の音素
  • Step 2:42個の音素の復習/同音異綴り(Alternatives)/Tricky Words(米国でいうSight Words)
  • Step 3:Step 1と2の復習/簡単な読み/簡単な綴り/ディクテーション/創造性を育む文章づくりのための働き掛け

Jolly Classroomは教員用のソフトウエアなので、教室内でタッチパネル式の大きなホワイトボードに投影して使用する想定で作られています。ZOOMなどを使ったオンライン授業やご家庭で使用する際は、デバイスによっては全部の教材を教室用仕様で使えるわけではない可能性もあります。とくに、画面へのタッチ機能が制限される場合は文字をなぞる練習(フォーメーション)などはお家で紙や小さいホワイトボードに書いてももらうといいでしょう。

Jolly Classroomは、教員だけでなく教育施設にとってもソフトウエア内で教員ごとクラスごとの枠を設定出来て、各クラスの進捗状況も一目瞭然、非常に使い勝手がよい造りになっています。

Jolly Classroomのサブスク価格

Jolly Classroomは、教育機関での購入を想定しているため年間サブスク料金が£250(日本では42,500円)と少々お高めです。

しかし、このソフトウエアがあれば、ブレンディングやセグメンティングの練習時にネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの音声が聞けること、反復復習の素材がよく練られていること、Jolly PhonicsのStep1からStep3のすべての教材が順を追って計画的に学習できることをふまえると、むしろバリュー価格かもしれません。

少しだけ残念なのは、Jolly ClassroomにはJolly Phonicsが誇る149冊ものデコーダブル・リーダーズ(Decodable Readers)が含まれていないことです。

音声もついたデコーダブル・リーダーズがJolly Classroomにインストールされれば、世界中の非ネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの教員や保護者にとって必須のツールになりそうです。

Jolly Phonicsのオンライン・リソース・バンク

リソース・バンクその1:42個の音素の発音が聴けるYouTube映像

お高い教室用ソフトウエアClassroomが用意できなくとも、Jolly Phonicsはさまざまなリソースをオンラインで提供しています。

試しに、リソース・バンクの上から2番目の赤い丸で囲った”Audio and Video Resources“を開けてみましょう。

いろいろなサービスが提供されているのですが、今回は”Audio and Video Resources”の一番下の赤い丸で囲んだ画像の“Hear the Sounds!”をクリックしてみましょう。

基本の42個の音素をネイティブ・イングリッシュ・スピーカーが順番に発音しているYouTube映像(イギリス英語版)にアクセスできます。

Jolly Phonicsのサイトから飛ぶとイギリス英語版しか聞くことができませんが、実はJolly learning社のYouTubeには米語版の基本の42個の音素のデモンストレーションも載っています。

そうしてなんと同じ女性インストラクターがイギリス英語版も米語版も発音のデモンストレーションをされているのがちょっと驚きです。

リソース・バンクその2:42個の音素の一つひとつの発音を確認

このインストラクターの映像のすぐ下には、可愛いお子様方の写真とともに、Jolly Phonicsの42個の基本の書記素が並んでいて、それぞれの文字のボタンを押すと、一つひとつの音素の音を聴くことができます。

ただ、ボタンを押すとまっくろな画面に切り替わってしまいターゲットの音のみが流れるので、保護者の方がフォローしないと「デバイスが壊れたのかしら?」と不安になってしまうかもしれません。

こちらのオンライン・リソースの仕立てはちょっと古い印象で、先ほどのYouTube画像やのちほどご紹介するアプリの方が使い勝手は良さそうです。

Jolly Phonicsの日本語版『保護者/教師用ガイドブック』

サブスクのソフトウエアJolly ClassroomやJolly Phonicsのサイトから音声にアクセスは出来るのですが、Jolly Phonicsの基本の42個の音素を習得するには紙媒体の教材を揃えた方がいいでしょう。

Jolly Phonicsにはたくさんの学習者用教材の用意があるので、まずはJolly Phonicsの全体像をとらえるために、日本語で説明している無料カタログをゲットしましょう。

こちらのページを開けると、日本語版『保護者/教師用ガイドブック』のPDFがダウンロードできるので、下から2番目in Japaneseの文字をクリックしましょう。

ガイドブックは24頁にわたってJolly Phonicsとその続編にあたるJolly Grammarの簡単な解説と教材紹介が載っています。

ちなみに英国教育省認定教材はJolly Phonicsのみですが、Jolly Phonicの対象年齢がレセプションと言われる4歳から5歳児であるのに対し、Jolly Grammarが小学校1年生(5歳)から6年間にわたって続く教材でフォニックス以外も網羅しているからだと思われます。

Grammarという名前が誤解を生みますが、Jolly Grammarは単に「文法」だけを教えるのではありません。このガイドブックによると「よりよいコミュニケーションのためのスキルを習得するため」とあって、フォニックスの復習や同音異綴りの確認などをふくめた、読みと綴りの理解と定着を目指す内容です。

ガイドブックにはブレンディングセグメンティングの方法もかなり詳しく書いてあるのですが、他にもTricky Words (Sight Words)というフォニックスの基礎だけでは読めない単語で、子どもの本にも出現頻度の高い語彙の説明も載っています。

くわえて、Trigky Wordsを子どもに覚えさせる方法も紹介されています。いくつか提案がある中で「語呂合わせ」はばぁばのような日本人英語学習者にはちょっと意外すぎる内容でした。

例えばlaugh(笑う)を子どもたちに覚えさせるための「語呂合わせ」として、”Laugh at Ugly Goat’s Hair. “(醜いヤギの毛を笑う)の頭文字(l-a-u-g-h)で覚えさせるとよいと書かれています。このまま日本人のお子様方に応用するのは難しそうですね。

やはりフォニックスはネイティブ・イングリッシュ・スピーカーのお子様が、生まれた時から大量に英語を浴びて育った土台があってこそ活かされる「読みと綴り」の教授方法なのだなとあらためて実感しました。

ガイドブックに載っている教材の中にはすでに最新版のカタログから姿を消しているモノもあるので、発行年月日の記載はありませんが、このガイドブックは少し古いのかもしれません。

Jolly Phonicsの教材カタログと教材販売先

では、ここから最新の教材をみていきましょう。2023年版の教材のカタログこちらから英国版米国版をダウンロードいただけます

英語版と米国版の教材では異なっている点が2つあることが注意点です。

ひとつには、収録されている語彙が少し違う場合があって、単語が異なれば当然演習問題に並ぶ絵が別物になっていることがあります。

二つ目は、書体が違うことです。英国版はIn Precursiveというちょこんとシッポがついたようなスタイルで、一方米語版はIn Printというカッチリした形です。

教材の入手先はいろいろ用意されています。、日本のJolly Phonicsのウエブサイトでは米国版教材を中心に購入が可能で、「Jolly Phonicsといえばイギリスでしょう!」と意気込んでアクセスすると肩透かしを食うかもしれません。

英国のJolly Learning Ltd.のUK Shopからは教員用・学習者用の教材、デコーダブル・リーダーズ(Decodable Readers)と呼ばれる読書用補足教材、アプリなどのすべての教材の購入ができます。またAmazon UKなどでも同様に購入可能な教材もあります。同様にJolly Learning Ltd.のUS Shopからは米国版の教材一式の購入が可能です。

Jolly Phonicsの学習者用教材

Jolly Phonicsの学習者用の基本教材は、学習者が文字を指でなぞることが出来るFinger Phonics Bookですが、他にも多数の教材、アプリ、デコーダブル・リーダーズ、家庭用キットなどさまざまな種類があります。

主要な物を表に仕立てたので、表の教材のうち補足説明が必要なモノだけのちほど取り上げます。

Jolly Phonicsの家庭で使える基本教材と価格リスト

保護者の方がご自身でJolly Phonicsにトライしようと思われる場合は、のちにご説明する教師用マニュアルは必要ですが、お子さま用にはまずは二重丸の教材をご準備されるのが、どんぐりばぁば的にはお勧めです。他の補助教材は、学習が進んだ時に少しずつ追加されると良いでしょう。

Jolly Phonicsのクラスに参加されている場合は、先生ご指定のJolly Phonics正規教材をお買い求めくださいね。

スクロールできます
教材名とばぁば的おすすめ度       内 容日本での価格英国での価格例
Finger Phonics Book基本書。音素の紹介とその音素からはじまる語彙の絵が掲載。ターゲットの文字が少しくぼんでいて、子どもがなぞって文字の形を理解。(音声なし)7冊あり。1,953円£7.00
Pupil Book (Student Book)Full SSPのシステマティックな学習内容を網羅するノートブックのような補助教材。アクティビティ多彩。英国版のタイトルはPupil Book、米国版はStudent Book。3冊あり。1,177円(米国版)£4.50(英国版)
Jolly Phonics Activity Bookターゲット音素の塗り絵やパズル、シール貼りなどアクティビティ満載の補助教材。7冊あり。1,488円£7.00
Work Book 白黒版で綴り方に重点を置くドリル教材。白黒なので学習者のモチベーションを上げる工夫が必要。7冊あり。781円£2.95
Jolly Phonics Lessons アプリ42個の基本音素やブレンディングの音も聴けるアプリ。Tricky Wordsや同音異綴り(Alternatives)もある程度カバー。身近にネイティブ・イングリッシュ・スピーカーがいない場合は強力な助っ人的存在。一番肝心な音素紹介のストーリー(Finger Phonics Bookの絵)の音声はない。無料版ではアクセスできる内容が限られるため要課金。(1,400円~1,600円)£8.99 (Jolly Phonicsのサイト、アップル、アマゾンなどをチェック)
デコーダブル・リーダーズ
次の項目で更にご紹介)
149冊用意されているデコーダブル・リーダーズは、コロナ禍、期間限定無料ダウンロードができたことで知名度が高い。現在はJolly Phonicsのサイトなどで紙媒体、e-booksの形態での購入が可能。セットで安く提供されている場合もある。e-booksの場合はGoogle BooksやApple Booksなど安く入手できる可能性もあるので要チェック。音声なし紙かe-booksかの形態とセットの有無、購入方法によって価格が異なるが1冊50円程度から。紙かe-booksかの形態とセットの有無、購入方法によって価格が異なるが1冊£1程度から
家庭復習用Kit米国版(Jolly Phonics at Home Kit)と英国版(Jolly Phonics Extra Kit)の家庭用学習キット。セット内容は異なり英国版は音声ペン付きで上で紹介したアプリにはなかったストーリーの音声が聴ける。日本では楽天やアマゾンなどで購入できる場合もある。(約3万円)2023年7月現在米国版がセール価格($85.50)、英国版が(£177.87)
低年齢(2歳)用の本My First Letter Soundsという「文字とCVCの単語」の載った絵本は2歳用で、Jolly Phonicsへの橋渡し的役割。Amazonで2,055円の出品あり£7.95
Jolly Phonicsの教材と価格リスト

価格リストでもご紹介したJolly Phonics Lessonsアプリはご家庭で手軽に使うことが出来ます。レッスンの復習にお子様が使うようJolly Phonicsの先生から指導されることもあるようです。

アプリ内の機能をすべて使うには課金(£8.99/1,400円~1,600円)が必要で、Jolly Phonicsのサイト経由やアップルストアよりも、Amazonの方が安いこともあるので要チェックです。

Jolly Phonics Lessons アプリでは、課金すると以下の内容がすべて学習可能になります。

Jolly Phonicsの家庭用有料アプリ:Jolly Phonics Lessons app

  • 前回まで学習した音素の復習
  • 基本のLetter Sounds の7グループ42個の音素を収録(Flash Cardを押すと音声視聴可能)
  • 音素のイメージをふくらませるためのストーリー(Finger Phonics Bookの説明)紹介(音声なし)
  • 音素を定着させるためのJolly Phonicsが開発した分かりやすいアクションの絵つき
  • ターゲットの文字の形(フォーメーション)の練習(Finger Tracingのボタンを押すとなぞることが出来る)
  • ブレンディングの練習(ドット付き)More Wordsを押すとさらに語彙が表示
  • 文字(フォーマット)が書けるかの練習
  • ターゲットの文字を印象づける歌(音声付)で上記のアクションをとりながら子どもと歌える
  • 同音異綴り(Alternatives)の2グループを収録
  • Phonicsのルールに当てはまらないTricky Wordsの6グループを収録
  • ゲームのコーナーも充実していて、6つのミニアクティビティが楽しめる(蜂が運ぶ文字を音を聴きながらクリックするSound Bees、綴りの音を聴きながら文字をタップするTap the sound、聴いた音がどの絵にあるかをクリックするIs Sound in Word?、(上記で説明したのとはまた別バージョンの)文字の書き方をなぞるLetter Formation、音を聴いて綴りを選ぶSegmenting、単語を読んで絵を選ぶReading)

いまどきのゲーム感覚の楽しいアプリと異なり、仕立ては非常にシンプルで、特に子どもをひきつけるゲームやポイント制などの仕組みはありません。

主として家庭での確認・復習用として活用されている地味なアプリですが、1回課金すればいい買取り方式なのでJolly Phonicsの学習者には便利に使えそうです。

Jolly Phonicsのデコーダブル系の本:デコーダブル・リーダーズ (Jolly Phonics Readers)

上の表でデコーダブル・リーダーズはレベルが色分けされています。本家サイトでもご覧いただけますが、ざっくりご紹介します。

Jolly Phonicsが提供するデコーダブル系の書籍(Decordable Readers)は149冊も用意されています。コロナ禍で一部がe-book版で無料配布されましたが、現在はさらに種類も増えています。

シンセティック・フォニックス【基礎知識編】でも説明したように、フォニックスのデコーダブル系の本は、学習した音素や書記素のみで書かれているので子どもにとって読みやすい仕立てになっています。

Jolly Phonicsには、2種類の本が用意されています。Jolly Phonics Readersの通常版(表紙が絵)と2020年に出された新たなシリーズOur World版(表紙が写真)がありますが、いずれも下の表で紹介する色別にレベルが分かれています。

  • オレンジの本Jolly Phonicsは音素42を7つのグループに分けて紹介しています。オレンジ色の本は、そのグループごとに作られているので、一つのグループを学習した後で、そのグループの音素とその前に習得したグループの音素だけから作られた本を使えることが最大のポイントです。ちなみにグループ1 (s, a, t, i, p, n)、グループ2 (ck, e, h, r, m, d)グループ3 (g, o, u, l, f, b)グループ4 (ai, j, oa, ie, ee, or)グループ5 (z, w, ng, v, oo, oo)グループ6 (y, x, ch, sh, th, th)グループ7 (qu, ou, oi, ue, er, ar)を扱っています。
  • 赤色の本:Jolly Phonicsが扱う42の音素(つまり、グループ1からグループ7)を学習すると読める本。3種類に分かれていて、(1) Inky & Friends (Jolly に出てくる登場人物のInky Mouseなどで例えば”The Pond”)、(2) General Fiction (例えば”The Pocket”)、(3)Non Fiction (例えば”Insect”)
  • 黄色の本:赤色の本プラス末尾の/ee/の音があるyなどをカバー
  • 緑色の本:黄色の本プラスサイレントe (マジックe)の長母音などをカバー
  • 青色の本 :緑色の本プラス「同音異綴り」Alternativesをカバー(同音異綴りは、例えば、playとtrainの/ei/の音は同じでも違うスペリング(ayとai)ということを指します。ちむ子先生とのお話でも触れて、参考の表も提供しているのでご覧ください)
  • 紫色の本:音素に関してはほぼ青色と同じだがOur Worldは主として自然科学的な内容なので少し難しめ

デコーダブル系の本は、紙媒体での提供だけではなく種類によってはe-book形式での購入もできて、Jolly Learning Ltd.のサイト、Apple BooksもしくはGoogle Booksでも購入可能です。たまにキャンペーン価格になっている時もあるのでチェックしてから買われた方がいいでしょう。

デコーダブル・リーダーズのレベルは色別になっている表がJolly Phonicsから提供されています。

家庭で副教材として使用することが推奨されていますが、音声がないのが非ネイティブ・イングリッシュ・スピーカーにはネックになっています。

ネット上では音声ペンと一緒に音声も聴ける非公式海賊バージョンが販売されている場合もあります。

一方、次の項目の家庭復習用Kit(英国版)ではペン付きの音声を用いて、同様なデコーダブル本を読むことができます。

Jolly Phonicsの家庭復習用Kit:米国版と英国版

Jolly Phonicsのデコーダブル系の本(Decodable Readers) 149冊だけでなく、他にも家庭用の復習Kitが売られています。

家庭復習用のKit米国版と英国版の2種類の用意があります。2023年7月現在米国のJolly PhonicsではJolly Phonics at Home Kitがセール中で上記のActivity Book7冊、DVD、歌のCD、音素紹介のストーリーのまとまった絵本(Jolly Stories)、ポスター付きです。

英国版の家庭学習用Kitなぞって音声の出るペン(TalkingPen)、音素紹介絵付きストーリーと単語の掲載された絵本(Letter Sound Book)、音素カード(Jolly Phonics Extra Flash Cards)、Decodable Readersに似たJolly Phonics Extra Readersの赤・黄色・緑レベルの本が各18冊ずつが付いたJolly Phonics Extra (Personal Edition)英国Jolly Phonicsで販売中です。

Jolly Learning社のYouTubeではJolly Phonics Extra (Personal Edition)の中身紹介映像の用意もあります。

購入時はExtraの音声ペンの設定に気を付けましょう。製造元が他社の本の音声なども雑多に入れているので、そのままボタンを押すと全然違うお話の音声が流れてしまいます。

説明書を見ながらJolly Phonics Extra用に(本にプリントされている⇒と押すなど)設定する必要があります。

また、念のため、ペンを充電している間は使えません。

同梱のデコーダブル系の本は一般に販売しているものとは表紙も内容も少し異なっていてExtra専用です。(次に説明しますが、ペンがついているので、?のマークから内容に関する質問や、巻末のトリッキーワード=サイトワードの音声を聞くことができます)

レベルは上の表にある、「赤い本」から「緑の本」の3つのレベルをカバーしています。Fictionもはいっています。

とりわけ、本のページに大きなハテナ印(?)がついている箇所をペンで押すと、コンテンツに関連した質問を投げかけてくれるのはポイントです。まさに欧米で流行っているダイアロジック・リーディングの問い掛けがあらかじめデコーダブル本に仕込まれているのが便利です。ただし、答えはないので、そこは保護者が考える必要があって、日本人には少しハードルが高いかもしれません。

さらに、注意すべき点は、このJolly Phonics ExtraのKitに付いているFlash Cardsには、Jolly Phonicsが独自考案した発音記号カードがついているものがあることです。Jolly Phonics Extra以外でこの独自発音記号はJolly Phonicsでは見掛けないこと、また口コミでも「独自の発音記号になじめない」など評判が今一歩なので、独自の発音記号はわざわざ覚えず、主として付属の音声ペンで音を確認する作業にカード使うにとどまった方が良さそうです。

音素の音は、有料のアプリ(Jolly Phonics Lessons app)でもカバーされてはいます。課金すればある程度のブレンディングなども出来るため、Extraに付属するカードよりもアプリの方が実際には使いやすい印象です。

Jolly Phonics Extraは家庭用の復習Kitですが、他の教材とかぶっていないおすすめポイントは、Finger Phonic Book(KitではExtraについてくるLetter Sound Book)に載っている音素紹介のストーリーを音声ペンで聴くことが出来る点です。このストーリーは有料アプリでも音声がないので、ExtraもしくはJolly Classroomでしか今のところ聴くことはできないようです。ちなみに、ストーリーの絵は改訂前のバージョンなので、少しレトロ感があります。

Jolly Phonicsの教員用マニュアルと手引書(Handbook)

学習者用ではありませんが、Jolly Phonicsを自宅で取り組むのであれば、紙媒体日本語版教員用マニュアルは必要かもしれません。『はじめてのジョリーフォニックス』はCD付3,850円、『はじめてのジョリーフォニックス2』はCD付5,060円で本屋さんやAmazonで入手可能です。

英語版のJolly Phonics Teacher’s Book(教員用マニュアル)はCDなしで1冊の仕立てで£11.5です。

Jolly Phonicsを教える教員だけでなく、保護者の方にも役立ちそうなのがJolly Phonics Handbookです。

100以上のコピーできる素材も載っていて、実践的でお勧めの教員用の手引書です。価格はUK shopで£39.50 (日本円で約7,110円)で塗り絵や文字の練習などの豊富なアクティビティが用意されています。

例えば(のちに述べる)Tricky Wordsのリストや塗り絵はこちらのHandbookにはまとまっていて、非常に使い勝手がよさそうです。

Y1 Phonics Screening Check用教材

シンセティック・フォニックス【基礎知識編】でご案内したように、英国においては小学校1年生(5歳)時の夏学期最後に、全児童がPhonicsのスクリーニング・チェックを受ける必要があります。

チェックを想定した「実在語」「非実在語 (Pseudo-words)」を含んだアセスメントのブックレットの用意(£65.95)もあり、チェックで使われる英国教育省が用意している宇宙人に似た絵のついているページもあります。(こちらの絵はサンプルのPreview this bookをクリックすると見られます)

お子様がスクリーニング・チェックを受ける前に学校であれ家庭であれ練習できると心丈夫かもしれません。

Jolly Phonicsのマジックeの扱い

Jolly Phonics のStep 2ではMagic <e>と呼んでいますが、基本のJolly Phonicsが終わって学ぶ小1(5歳)以降のJolly Grammarではhop-over <e> もしくはsplit <e>と、より正確な内容を表す名称に変わっています。

Jolly Phonics終了後のJolly Grammar

日本語の『保護者/教師用ガイドブック』でも説明されていたように、Jolly Phonicsが小1(5歳)で終了すると、小2からはJolly Grammarに学習が移行します。

Jolly GrammarはJolly Phonicsでカバーした箇所の復習と、読みと綴りにつながる文法項目を少しずつ教えるシステムで、毎週の授業で10個程度の単語テストが想定されていたりと日本人の児童にはややハードな内容ではありますが、小1から小6まで続きます。

Jolly Grammarになると品詞に着目することが教えられ、同時にJolly Dictionaryを頻繁に引いて語彙の定義を確認させたりと、「読みと綴り」を定着するための工夫に富んでいます。

Jolly Phonicsのフォノロジカル・アウェアネス (Phonological Awareness)

Jolly PhonicsのStep1~3では、はじめからsatipnの習得にフォーカスしているため、特にPhonological Awarenessはカバーしていず、主としてJolly Musicでナーサリーライムなどを扱うようです。

実際Jolly MusicのWebinarでもご担当の先生がナーサリーライムをジェスチャー付で歌われていましたが、そのYouTube映像の公開は2023年7月現在されていません。

Jolly PhonicsのTricky Words

Jolly Phonicsが扱うTricky Words (Sight Words)は72個です。

UKのオンラインショップではポスターも用意(£10.54/約1,893円)されていますが、72個のTricky Words (いわゆるSight Words)がStep1から3で紹介されています。YouTubeでの説明はこちらからご覧いただけます。

上記のHandbookにはTricky Wordsのリストやアクティビティが載っています。72個のTricky Wordsはこちらのリストをご覧ください。

I/the/he/she/me/we/be/was/to/do/are/all/

you/your/come/some/said/here/there/they/go/no/my/

one/by/only/old/ like/have/live/give/little/down/what/when

why/where/who/which/any/many/more/before/other/were/because/want

saw/put/could/should/would/right/two/four/gores/does/made/their

once/upon/always/also/of/eight/love/cover/after/every/mother/father

Jolly Phonicsの教材に関してのごく個人的感想

Jolly Phonicsの教材の挿絵は少し古風で味わい深かったのですが、2021年夏に今風の可愛らしい挿絵に改訂されました。教材購入の場合は新旧版にご注意ください。ちなみにJolly Classroomのイラストはすべて新版になっています。

Jolly Phonicsは非常にシステマティックな教授方法で、英国本国でも2009年当時約7割の学校で採用(*註5)されていました。

日本語でアクセスできる情報が限られるためかJolly Phonicsの中身について知っている方はそれほど多くないようで、もう少しユーザーフレンドリーであれば今のフォニックス・ブームに便乗して普及するだろうにと残念な気持ちでいっぱいです。

以前行った限定無料ZOOM講座でも参加してくださった方から「Jolly Phonicsの日本語版教員用マニュアルを買ってはみたけれど何をどうすればいいのかよく分からない」という意見を複数いただきました。基本的にはJolly Phonicsを教えるトレーナーの指導ありきの教授方法で、保護者主導のおうち英語は想定されていないのかもしれないです。

しかし、2022年のJolly Classroomの発売で誰しもがクリック一つで基礎から応用までシステマティックに網羅した素晴らしい教授法にアクセスできるようになったことまたネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの発音付でブレンディングからセグメンテーションまですべての課程を聴くことができるようになったことで、日本の児童生徒向け英語教育の潮目が変わる予感がします。

その他:Jolly Phonicsの教員研修・児童生徒向けレッスンおよび問題点

日本では基本的にJolly Phonicsは公認トレーナーが有料で指導者向け・児童生徒向けの各種講座を提供しています。

価格や内容もトレーナーによるので相性の良い研修講座やレッスンを見つけられると良いのですが、ネット上の情報だけで探すのはなかなかハードルは高いかもしれないです。

Jolly Phonicsは教員研修を終えた講師が児童生徒にレッスンする際ロイヤルティーなど徴収しないジェネラスなシステムです。Jolly Phonicsの本部が協会をつくって講師を囲い込んでマネージするようなことがないため、著作権を無視してネット集客するなどシステムの脆弱性を突く残念なケースも昨今見受けられました。

Jolly Phonicsの教員向け講座をいろいろ受講してみたどんぐりばぁばの個人的な考えではありますが、子どもが楽しく前向きに音素や書記素を学び、その都度学習者の様子をみながら定着をうながすアクティビティをきめ細やかに提供することがJolly Phonicsの強みではないかと思っています。

Jolly Phonicsの児童生徒向けレッスンは単に一方的に音素を教えるだけではなく、学習者である子ども達の理解や習得をまず第一に考えられていることも強調したい点です。

さらに子どもたちが自力で読み綴れるよう、自発的に読んだり書いたりすることで自信をつけモチベーションを上げるために、Jolly Phonicsのレッスンは少しずつ行ったり来たりしながら進むよう作り込まれています。そのあたりのきめ細やかなフォローアップシステムの良さが知られていないのは、歯がゆい思いです。

「Jolly Phonics編」のおわりに

Jolly Phonicsはまさに『ベールに包まれた帝王』、有名ですが中身が知られていないのでどんぐりばぁばもはじめてイギリス人のDavid先生からJolly Phonicsの基礎を教えていただいた昨年の秋は、全体像の把握に相当時間が掛かりました。

英国のシンセティック・フォニックスの老舗なだけあって、Jolly Phonicsでは3つのステップで4歳児に1年かけて基礎のフォニックスの42音を定着させるだけではなく、読みと綴りにつながるよう少しずつステップアップして行くプログラムを提供していて、Full SSPの真骨頂を発揮しています。

さらに2022年に発売された画期的な教室用ソフトウエアJolly Classroomは、ネイティブ・イングリッシュ・スピーカーの音声付で秀逸な出来栄えです。このソフトがもう少し改善されてデコーダブル・リーダーズまで網羅されれば、それこそキング・オブ・ザ・システマティック・フォニックスになるのではないかと今後が楽しみです。

最後にご参考まで引用論文のタイトルなどはこちらです。

加藤茂夫、入山満恵子、山下佳世子、渡邊さくら『ジョリーフォニックス指導効果検証の試みー新潟県南魚沼市の試みからー』小学校英語教育学会誌 20巻1号, p.272-287, 2020年3月20日

(念のため『Jolly, Twinkl & Floppy’s :3つのフォニックス比較』シリーズはPR案件ではございません。)

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