おうち英語に使えそうな子ども向けの英語アプリ、何を基準に選べばいいのか迷ってしまいますね。
無料も有料も子ども向けの英語アプリはたくさんあって、ネットで評判を読んでもよく分からなくて。
アプリが教育的かどうか研究者が推す「見極めポイント」が4つありますよ。
研究者が人気の123個の教育系アプリを格付け
Hirsh-Pasek, K., Zosh, J. M., Golinkoff, R. M., Gray, J. H., Robb, M. B., & Kaufman, J. (2015). Putting education in “educational” apps. Psychological Science in the Public Interest, 16(1), 3–34. https://doi.org/10.1177/1529100615569721
Meyer, M., Zosh, J. M., McLaren, C., Robb, M., McCaffery, H., Golinkoff, R. M., Hirsh-Pasek, K., & Radesky, J. (2021). How educational are “educational” apps for young children? App Store content analysis using the four pillars of learning framework. Journal of Children and Media, 15(4), 526–548. https://doi.org/10.1080/17482798.2021.1882516
今回ご紹介するのは、Hirsh-Pasek先生とそのお仲間が2015年に書いた論文とMeyer先生のグループが2021年に出された論文です。
アプリ123個の格付け概要
子ども向けの教育アプリのクオリティーがあまりにバラバラではと問題視したMeyer先生たちは、Hirsh-Pasek先生グループの「4つの見極めポイント」を用いて、Google PlayとApple Storeでもっともダウンロードされている人気の子ども向けの教育系アプリ100個とプラスアルファで合計123個のアプリ(註*)を格付けしました。
格付けは4つの「見極めポイント」それぞれに0点から3点を付与するため、満点のアプリは12点をゲットすることになります。結果は、残念ながら123個中12点もしくは11点を獲得できたアプリは一つもありませんでした。
(註*)論文では124のアプリを調査と記載がありますが対象とされたアプリのリストには123しか見当たりませんでした。またアプリの調査は2018年から2019年にかけて行われています。なお研究対象のアプリには無料有料どちらも含まれています。
アプリ123個の獲得した格付けポイント一覧
見極めポイント4つをご紹介する前に、123個のアプリが獲得した見極めポイント数をみてみましょう。
見極めポイント獲得数 | 該当アプリの数 | 代表的なアプリ表紙 | 代表的なアプリ名(日本からダウンロードできないアプリもあり) |
12(推奨(註**)) | 0 | 該当なし | |
11(推奨) | 0 | 該当なし | |
10(推奨) | 2 | Daniel Tiger’s Stop & Go Potty | |
My Food-Nutrition for Kids | |||
9 (推奨) | 5 | LEGO DUPLO Town | |
Toca Life: School | |||
Zoombinis | |||
8 (推奨) | 10 | My Very Hungry Caterpillar AR | |
Sago Mini Frineds | |||
7(高品質) | 5 | Sky View Light | |
Star Walk-Night Sky Guide: Planets and Stars Map (現在は名称がStar Walk2に変更) | |||
6(高品質) | 11 | PBS KIDS Video | |
Solar Walk 2-Spacecraft 3D and Space Exploration | |||
5(高品質) | 18 | Super Why! Phonics Fair | |
Epic! | |||
Phonics Genius | |||
4 | 37 | Teach Your Monster to Read-Phonics and Reading | |
Math Learner: Easy Mathematics | |||
Eric Carle’s Brown Bear Animal Parade | |||
3 | 31 | Duolingo (ABC): Learn Languages Free | |
Super ABC! Learning games for kids! Preschool app (現在は名称がBini ABC games for kids!に変更) | |||
2 | 1 | Baby piano for kids & toddlers | |
1 | 1 | Teenage Mutant Ninja Turtles: Half-Shell Heroes | |
0 | 2 | Baby Phone | |
Balloon Pop Kids Learning Game Free for babies |
Meyer先生たちが推奨される8ポイント以上のアプリは123個中わずかに10個、高品質と分類された5ポイント以上のアプリを入れても51個と全体の3割強しかありません。人気のアプリであっても、研究者の評価はなかなか厳しいですね。
1つ目のポイント:能動的な学習を促進
最初の見極めポイントは「能動的に子どもが学習するかどうか(アクティブ・ラーニング)」で、アプリが子どもの思考力を高めたり、知的努力を促すかに注目しています。
- 単純な因果関係など簡単な内容ではない
- 段階的により難しい課題が設定されている
- 子どもが主体的に回答しないと進めない設計である
- 子どもが自分の快適ゾーンから出てクリエイティブな創造性を発揮できる
この1つ目の見極めポイントは7割強のアプリが低評価(1点もしくは0点)しか獲得できず、「質の低いデザインが多い」と著者グループは酷評しています(Meyer et al. 2021, p.533)。
一方で1つ目のポイントで2点を獲得できたLego DUPLO Townのアプリは、12点中9点を獲得した研究者太鼓判のお勧めアプリです (Meyer et al. 2021, p. 531)。レゴデュプロのブロックを使ってバーチャルで家を作るLego DUPLO Townは、家のデザインについて子どもが自分の意見を表明しないと次のステップに進めない仕立てになっている点が高評価されています。
アプリが子どもを教育するのではなく、子どもが自ら考えてアプリを使いこなすようデザインされていることが重要なのですね。
2つ目のポイント:適切なフィードバッグを提供
2つ目の見極めポイントは「子どもの学習プロセスにどのようにアプリがかかわっているか(学習プロセスへのエンゲージメント)」です。
言い換えれば、子どもがアプリ学習する時、正解であれ不正解であれ適切なフィードバックがあることが望ましいとしています。具体的には、アプリのインタラクティブな仕掛けやゲーム性が子どもの学習をサポートするのか、あるいは逆に悪影響を及ぼすかがポイントになっています。
- 広告が表示されない
- 適切なフィードバッグを提供する
- 余計なアニメーションがない
- 子どもが気が散らないデジタル環境を提供
Meyer先生たちは、広告や過剰なアニメーションは子どもの処理能力に悪影響を与えてしまい、新しい情報を学習するための認知能力を下げると考えています (Meyer et al. 2021, p.536)。
例えば、広告が頻繁に表示される無料アプリは、子どもの集中力をそぐと判断されてスコアは低くなりました。また、課題をクリアした際の詳しいフィードバッグが必要と先生たちは主張されていますが、過剰にキラキラした星が飛ぶ画像や大きな音などは学習を阻害して逆効果と判断されています。
2つ目の見極めポイントは、子どものワーキングメモリーに悪影響を与えない「気が散らないデジタル環境」が大事であると強調されています(Meyer et al. 2021, p.536)。
3つ目のポイント:有意義な学習&実生活に応用できることを示唆
3つ目の見極めポイントは、「意味のある学習(ミーニングフル・ラーニング)」であるかと、さらに学習によって得た知識を子どもの生活に応用する方法を示唆するかが問われています。
- 子どもが実生活で再現しやすい学習内容
- 数字やフォニックスなど就学前の子どもが学ぶべき基礎的スキルを網羅
- 子どもの実生活に関連するごっこ遊びや戦略的な解決方法を学習
- 単なる暗記学習を促すのではなく、概念的に理解できるよう誘導
3つ目のポイントの最後、「単なる暗記学習」にとどまらせない点は、どんぐりばぁばには意外に感じました。ともすれば子どもにとって退屈な反復が必要な「暗記学習」こそ、アプリで効率的に楽しくこなせば良いのでは~とお気軽に考えていたどんぐりばぁばです。
しかし、小さい子どもであっても単なる暗記学習ではなく、丁寧に複数の方法を用いて暗記作業の元になっている概念を教えることが、将来的に使いこなせるようになるのだとMeyer先生のグループは説明されています(Meyer et al. 2021, p.536)。
3つ目のポイントが低いアプリは全体の64%で、先生方は「デジタル環境での有意義な学習と、その応用が促進されないデザイン」を問題視しています(Meyer et al. 2021, p.534)。
4つ目のポイント:子どもの社会性を育成
4つ目の見極めポイントは、アプリを通じて子どもと親など周囲の方、また子どもとアプリのキャラクターがかかわっているか(ソーシャル・インターランクション)に着目しています。
- 子どもと保護者はアプリを一緒に使って学習する機会がある
- 子どもはほかの人と一緒にアプリのゲームなどに参加することがある
- アプリ上のキャラクターと子どもが心を通わせることがある(パラソーシャル関係)
親しみやすいアプリのキャラクターが、子どもに対して優しくフィードバックしたり寄り添ったりすることで、子どもとキャラクターの間に親密な関係が生まれること(パラソーシャル関係)が良しとされています (Meyer et.al, 2021, p.537)。
言い換えれば、単に子どもが良い結果を残せたからキャラクターから褒められるというような単純なフィードバックだけでなく、子どもの感情にキャラクターが寄り添う姿勢を見せていることが大事なのだそうです。アプリのインターフェイスを通じてキャラクターと心を通わせられるか(パラソーシャル関係)については詳しくはこちらの記事をご参照ください
こういったキャラクターとのやりとりが子どもの発達に欠かせない要素であることをどんぐりばぁばははじめて知りました。
まとめ
Meyer先生たちは、保護者が子どもにアプリを使わせる指標の一つとして4つの見極めポイントをご利用くださいと提案しています。すべてのポイントが高得点である必要はありませんし、有料アプリだから高得点を得られるというわけでもありません。
Meyer先生グループの研究では、対象アプリを複数の研究者が実際に20分間プレイして評価の元データとしています。信頼性の高い研究者の判断であっても20分という短時間のプレイですので、アプリが本当にお子さまに合うかどうかはやはり保護者の方のご判断が求められますね。
デジタル機器が普及して子どもを対象にしたアプリが開発されたのはここ10年です。まだまだアプリの判断基準はゆらいでいます。この4つの見極めポイントが、お子さま向けのアプリを探す際の参考になればと願っています。