おうち英語で大人気の子ども向け絵本シリーズのOxford Reading TreeとRaz Kids、どちらがいいのかなんとなく絵の好みで選んでしまいがちですね。
Oxford Reading Treeは本を見たことがあるのですがRaz Kidsはアプリしかないので中身をチェックする機会がなくて。どんな違いがあるのでしょう?
中国の研究者が共通点と相違点をまとめているので見てみましょう
Oxford Reading TreeとRaz Kidsの概要
Yadi, Z. (2020). A study of Preschool Children’s second language acquisition from the perspective of Piaget’s theory of cognitive development stages—a comparison between raz and Oxford reading Tree. Proceedings of the 2020 5th International Conference on Humanities Science and Society Development (ICHSSD 2020). https://doi.org/10.2991/assehr.k.200727.192
今回ご紹介するのは、中国の研究者がグレード別英語絵本セットOxford Reading TreeとRaz Kidsを比較した論文です。「両方ともに良い点がある」(Yadi, 2020, p.667)と利用を勧めているのですが、おうち英語に導入する時はあらかじめ二つの違いを理解しておくと良さそうですね。
Oxford Reading Tree (以下ORT)は英語圏で『国民的愛読書』として知られ、幼稚園、小学校で読書への興味をもたせる意図で導入されています。中国ではインターナショナルスクールで採用されているだけでなく、家庭でも英語学習によく使われているそうです(同, p.660)。
一方、Raz Kids (以下Raz) はReading A-Zの略でアメリカの1万校以上の公立小学校で毎日の宿題に利用されていますが、こちらも中国のインターナショナルスクールでも人気と書かれています(同, p.659)。
この論文では、研究対象のレベルをあわせるために、ORTの4歳から5歳を対象にしたレベル1~3と、Razの4歳から6歳をターゲットにしたAAレベルを比較しています。日本の「おうち英語」でも人気のORTとRaz Kids、どこが同じでどこが違うと説明されているのでしょうか。
ORTとRazの2つの共通点
子どもと絵本を読む時は「声掛けや質問」することが最近しきりと勧められていますが、Yadi先生もこの点に注目して「両方とも本の前後に保護者が利用できる質問項目が載っているので、ストーリー理解の確認が可能」(Yadi, Z., 2020, p.662)と指摘しています。
共通点の二つ目は、両方ともに「擬人化された動物や物」を描いていることで、特に子どもが共感できる内容になっている点が重要なのだそうです(同, p.664, 665)。ORTにはご存じ家族同様のわんちゃんFloppyがいますし、Raz Kidsでも”Fido Gets Dressed”では擬人化された犬が登場します。また”In”や”Out””Off”でも動物が意思を持って行動している点に注目しています。
ORTとRazの7つの相違点
相違点は7つ指摘されているのですが、些末なことから「なるほど」と思える点ことまでさまざまでした。以下表にしてみました。繰り返しになりますが、Yadi先生の論文はORTはレベル3まで、RazはAAレベルなので上のレベルについての言及はありません。
相違点 | ORT | Raz |
イラストか写真か | 同じタッチのイラストで子どもが興味を引く細かい点まで描写 | 写真やイラストなど本によってイラストレーターも違いさまざま。時代遅れの描写もあり |
社会化を手助け | 子どもの日常生活にほぼ特化 | イースターやハヌカ(ユダヤ教の祭事)などのイベント、空港や書店などのシーンで社会的知識を身に付けられる |
ゲーム性 | 眼鏡や特定の人物探しなど子どもが好きなゲームあり | あえて言えば読後に☆がキラキラしてポイントがたまる |
コミュニケーション表現が豊富 | 日常的に子どもが使える口語表現を紹介 | 特になし |
語彙や文型 | Oxford大学出版社基準で選定。同じ文型を繰り返して新しい単語を導入することは子どもの読書に対する自信をもアップ | CCSS(Common Core State Standard)に準拠。頻度の高い単語の選定や文章の長さなどはCCSSにのっとっている | 米国の教育レベルを定めた
フォニックス | ORTではなく別に | フォニックスシリーズの用意あり(Floppy’s Phonics Fiction/Floppy’s Phonics Decoding Practice/ Decode & Development等)ORTシリーズではなく家庭学習用のRead With Oxford (Phonics Biff Chip And Kipperなど) も日本でも販売中関連シリーズで | Headsproutシリーズの用意がある。2024年にHeadsprout改訂予定。
アプリなど | Oxford Reading Club)2023年発音チェックもあり/PCと本(CDあり) | アプリ(アプリ/PC |
まとめとオマケ情報
Yadi先生の論文は中国での状況を元に書かれているので価格についての記載はなかったのですが、日本で利用するのであれば、ORTの場合アプリ(Oxford Reading Club)であっても年間1万円程度は掛かります。加えて、日本のOxford大学出版社で本やCDを購入すればかなりの価格になってしまいます。セール情報など公式のソーシャルメディアで案内してくれるのでうまく利用できると良いですね。
最近は日本の公共図書館でもORTシリーズを置いているところもあって取り寄せが出来る場合もあるので、司書さんに伺ってみるのもいいかもしれません。
ORTは同じ登場人物に子ども達が愛着を感じることがポイント高めですし、レベルがあがれば子どもが押さえておくべき昔話が元になった物語構成になるお話もあるので、元ネタを読む楽しみも広がりますね。
どんぐりばぁばのイメージでは、ORTは英国では学校から貸し出されると思い込んでいたのですが、一般書店でもORT通常版と(ORTシリーズではありませんが)家庭学習用のRead with Oxfordシリーズが並んでいて、店員さんに聞いたところコンスタントに売れているようでした。Read with Oxfordシリーズの一部には通常版のORTも何冊か含まれています。
一方、Razの場合は、どなたかが先生役になってグループを作ってくだされば、グループの人数にもよりますがかなりお安く利用できるのが魅力的ですね。インスタグラムやTwitterなどでたまに募集される方もいらっしゃるので、グループに入れていただければ助かりますね。どんぐりばぁばもTwitterで募ってくださった方にお願いして破格の値段で利用させていただいています。本当にありがとうございます!
Razは教員が宿題に利用できたりといろいろなシリーズが用意されているのですが、保護者が使うのであれば通常のReadingシリーズだけでも十分な気が個人的にはしています。さまざまなトピックが扱われているので、自然と社会的知識が深まるのもよく考えられていますね。
Yadi先生のおっしゃるとおり、ORTもRazもお子さまに使い勝手の良い魅力的な内容なので違いを理解して補完しながら予算に応じて利用できれば「おうち英語」の強力な助っ人になりそうです。
注意点
このブログでは何度か触れているのですが、ORTであれアプリのORCであれ、Razであれ、どんどん読み進めることが目的でないことを常に心に留めておきましょう。
多読のスクールでも、またフォニックスの学習においてもよく言われることですが、ついつい「次の本、次の本」とお子様も保護者の方も興が乗って進んでしまいがちですが、字面だけ読めても深い読みにはつながらないことを忘れずに。
しっかり内容を理解しているのか、一冊読むごとにお子様と内容を話し合ったり確認したりすることが、実は読みと綴りにつながる早道でもあるので、焦らずに読んでいきましょう